ソウル再び!HOTな旅

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2日目    08年8月11日(月) 仁川中華街,自由公園,漢江クルーズ

 目が覚めてカーテンを開けるとソウルの街が広がっている。天気予報では旅行期間中ずっと傘マークのオンパレードであったが、昨日に続いてどうやら今日も天気は持ちそうな感じがする。もっとも戸外を歩き回る旅行者にとって、あまり日差しが強すぎるのは勘弁願いたいところだが。

 昨日、クォンさんに手配をお願いしたジュク(粥)を食べに、お隣のニューソウルホテルの2階へ行く。
 ニューソウルホテルは建物も綺麗だし、我々より明らかにワンランク上の料金の客が泊まっているようだ。

 ジュク(粥)も1杯一万ウォンと高め。日本だったらこの内容で千円は逆に安いかもしれない。後から続々とやってくるのは皆日本人。いわゆる日本人相場なのだろう。ちなみに味のほうは2年前に別な店で食べた食べたジュク(粥)のほうが美味しかったような気がする。


 今日の予定は、朝一番でハンガン(漢江)クルーズ。そして国鉄に揺られてインチョン(仁川)探索である。

 地下鉄の切符売り場には必ず千ウォン専用の自販機がある。だが不思議にこれを使っている人を見かけない。現地の人達はT-Moneyという電子マネーで地下鉄やバスを利用しているようだ。この自販機はコインしか使えないところがネックなのだ。千ウォンなら札の方が手持ち量が多いのに札対応の機械は滅多に見かけない。

 そして一番困ってしまうのが、たまに札対応の機械が見つかっても殆どが故障中か、あるいはあまり紙質のよくないウォン紙幣を受け付けてくれないこと。要するに自販機は使えないと考えた方が良いのである。

 ソウル市内は殆どの場所に千ウォンで行けてしまうというシンプルな料金体系の為、皆黙って千ウォン紙幣を窓口に出して切符を買っているのだ。千ウォンを越えるのは長距離の場合だけなのでこれが現実的な方法なのだろう。日本だと自販機が壊れていることを看過出来ない輩が必ず現れるものなのだが、ここでは誰もが自販機は壊れているから使わないと初めから考えているのである。電子マネーの普及が一番の要因であろうが、この辺がやはり国民性として面白いところだ。

 ヨイナル駅で降り、セミの声降りしきるなか、朝の強い日差しを浴びてハンガン(漢江)遊覧船の発着場まで歩く。もう既に汗だくだ。どうも先ほどから歩いているのは我々だけと思ったら、遊覧船は11時からだという。私の準備不足が露呈し、家内と娘の追求が厳しい。(^^;

 気を取り直して次の予定地であるインチョン(仁川)へ向かう事にした。ヨイナルから再び地下鉄5号線に乗り、2駅めのシンギル(新吉)駅で1号線へ乗り替える。1号線は国鉄の京仁線と乗り入れをしているが、このシンギル(新吉)は既に地上駅になっている。
 また、途中から南方面のチョンアン(天安)と今回目指す西方のインチョン(仁川)に行き先が別れるので要注意だ。

 シンギル駅でベンチに腰を掛けて電車を待っていると、数人のアジュマ(おばさん)達がやってきた。韓国は儒教の国なので目上の人に席を譲るのは常識とよく言われる。座っていた家内と娘が腰を上げると、「アンジャジュセヨ!アンジャジュセヨ」(座ってください座ってください)と声を掛けてくれた。我々が日本人とだと判って言っているのかどうかは不明だが、何となく嬉しい気持ちになった。

 珍しいものも見つけた。本の自販機である。値段は一律千ウオォンで、こちらはすんなりお札が使える。早速娘が血液型の本を一冊購入。本の内容はチンプンカンプンだが。

 地下鉄にはよく物売りが来る。勿論違法である。流石にソウル中心部では滅多に見かけないが、1号線は距離が長いので仕事がしやすいのだろう。早速カートを引いた男が車両の丁度真ん中で大きな声で話し始めた。日焼け防止のアームカバーが3,000ウォンだ。韓国語で何やら熱っぽく語っている。如何にこの製品が素晴らしくてお買い得かということをしゃっべているのだろうが、こちらはとんと判らない。
 車内の反応も様々で、まったく無視の人、チラチラと見ている人。じーっと聞いている人。カメラを向けてみようとも思ったが、撮ったら買え!と言われたら嫌だったのでおとなしくしていた。残念な事にこの車両での彼の売上げは無かった。

 窓外の風景は、初めのうちは東京の中央線を彷彿させるような街並みである。時折大きな駅に幾つか止まるが、終点のインチョンに近づくに従い段々と街も寂しい感じになってきた。終点の一つ手前のトンインチョン(東仁川)ではあらかたの客が降りきってしまい、乗っている車両にはもはや我々と数人のみ。
 終点間近のポイントが車両を軋ませながらインチョン駅に到着だ。

 インチョン駅の駅舎は極めて小さく、改札と切符売り場、簡単な待合いのベンチしかない超コンパクト設計である。どこか懐かしさを感じる駅舎を出ると観光案内所と中華街の入り口が目に入った。

 インチョンというと、普通は仁川国際空港のイメージがあるが、ここと空港は直線にしても約10km程離れている。朝鮮戦争の折、マッカーサーが米軍を引き連れてこの地より侵攻したことで有名であるが、釜山に次ぐ港湾都市であり、開港時の外国人居留地として日本人街と中国人街が並立し、その名残として韓国では珍しい中華街がここにはあるという訳だ。

 観光案内所には日本語が出来る係員がいると聞いていたので、まずここで話を聞くことにした。実を言うと細かい予定など何一つ立てていなかった。シティーバスに乗って市内を回って見ようか、程度の気持ちで来たものだから心細くないと言えば嘘になる。インチョンについてはガイドブックの片隅に小さく紹介されているのにとどまるだけあって、流石に見渡しても日本人の姿は皆無である。

 いくつか観光コースの提案を受けたが、あまり長時間インチョンにとどまるつもりはなかったので、中華街とマッカーサー像のある自由公園散策にとどめる事にして出発する。

 恐らく世界中どこの中華街でも共通であろうデザインの門をくぐる。時間がまだ早いせいか静かな街並みだ。歩道に遠慮なく広げられて干されている唐辛子が誠に色鮮やかだ。急な階段を登り、振り返るとインチョンの街並みが落ち着いた佇まいを見せる。

 そのまま中華街を突き抜けるようにして高みを目指して歩いて行くと自由公園に入る。まだリタイヤ組でもなさそうな歳格好のアジャッシ(おじさん)達が公園の中で平日の昼間からブラブラしている姿をよく見かける。アジュマ(おばさん)達は必ずどこかでで働いてる姿しか見かけないのだが。この国はこんな所も面白いものである。

 公園の一番奥にマッカーサーの銅像があり、北の侵攻から祖国を救った勇姿を称えている。韓国の国章であるムクゲのおおぶりな花に見送られながら公園の階段を降りると、瓦屋根をまとった古い塀のむこうに港が見えた。

 日本のスーパーカブによく似たバイクが駐まっていた。ガッチリした荷台とシート前の巨大なふくらみ。あれはガソリンタンクなのだろうか。カブなら燃費が良い筈なのであんな大きなタンクは不要だろう。きっと収納に違いない。

 韓国で見かけるバイクは、このように荷物運搬用が殆どである。ソウルの街中で極たまに日本のスポーツバイクを見かけるが、99%はこのように働くバイクと言ってよい。

 観光案内所で貰ったガイドマップを頼りに歩いてきたが、方角が判らずちょっと迷子のようになった。近くの大きな建物(後で中区庁舎知る)の前に立っていた警備員に地図を広げて身振り手振りでここは何処だと尋ねると、覗き込んでヨギヨ(ここですよ)と指を差して教えてくれた。

 日本租界と中国租界の境界跡地の街並みは、よく見ると電柱が全く無い事に気が付く。景観の為、地下に埋設してしまったのだろう。恐らく仁川空港が開港したのに合わせてこちらの旧市街を整備したのだろうと推測するが、その割には観光客があまりにも少ないのは気のせいか。


 のんびり歩いていたら時間も丁度お昼時。観光案内所で推薦された紫禁城という中華料理店に入る。
 これまた強烈に日本語も通じなければ漢字メニューも無い。だが英語メニューがあるのは助かる。

 韓国の中華料理で有名なのはジャジャ麺。下の写真の真っ黒いのがそれである。よく韓ドラで口の周りを真っ黒にしながら食べているシーンがあるが、韓国人にとっては元祖ジャンクフードの位置づけである。以前日本で通販で取り寄せた物を食べた事があったが、お世辞にも旨いもので無いことは知っていた。だが、発祥の地と言われれば食べない手も無い。

 娘は大盛りの海老チャーハンに目を白黒し、家内は麻婆ご飯の辛さに舌を巻いている。ジャジャ麺は見た目ほどインパクトは無いが、太めの麺に独特な味の黒味噌タレが絡んで結構イケルではないか。やはり元祖は違うねなんて思いながら完食!

 焼饅頭(焼餃子)を頼んだら揚げ餃子が出てきた。焼く=揚げる、なのかな?具がしっかり詰まっていてなかなか美味。薬味で臭みを抑えているので肉嫌いの自分でも抵抗無く食べられる。

 隣で韓国人の若いグループ(男1人女2人)が食事をしていたが、韓国では大体1人前が日本で出される超大盛りに相当する量なのに、体の細い娘でもぺろっと一人前平らげて涼しげな顔をしているのは驚きだ。あれで太らないのはやはりカプサイシン効果か?

 大盛り料理をなんとかやっつけて、店の入り口にあるレジに伝票を出して「ケサンジュセヨ」(会計お願いします)。

 レジの女性がにこやかにこちらを見ていたが日本語で話しかけてくる気配は無い。代わりに「マシッタ?」(美味しかった?)と聞いてくる。何も考えずに即「マシッソヨ」(おいしいです)と答える自分にビックリ。マシッソヨは本当は食べてる最中に言う言葉だから、現在完了形で言うとどうなるんだろなどということはこの際どうでも良い。お互い意志が疎通したのは間違いなさそうである。


 駅に戻り窓口で筆談で切符を買って戻ると、家内と娘が韓国人のアジャッシ(おじさん)に何やら日本語で話しかけられている。相当聞き取りづらい日本語だが、要約すると以前日本に遊びに行ったことがあるという感じの事を話していた。廻りの韓国人もあっけにとられて我々の応酬を見ている。ソウルでは日本人なんてそんなに珍しくないが、ここインチョンでは希少なのかもしれない。

 朝と同じコースでまた電車の客となる。冷房が効いている車内は極楽だ。途中うつらうつらとしているとあっという間にくシンギル(新吉)に到着した。朝のリベンジの為、ヨイナル駅から再びむせかえるような灼熱地獄の地上に出てハンガン(漢江)のほとりを歩く。

 チケット売り場に着くと丁度2時出発の船が出たところだ。2時の船にはロッテワールドのあるチャムシル(蚕室)行きの便があったのだが、次は夕方になってしまう。ここの船着き場から周遊して戻ってくる船があったのでそれに乗ることにした。

 熱風逆巻く暑さも、出航すると川面を流れる風が心地よい。ナイトクルーズはソウルの夜景が綺麗だというが、やはりハンガン(漢江)の風情を楽しむなら昼の方がよいと思う。

 夏休みで韓国人ファミリーも多い。子供達の元気な声と、風と、高層ビルの立ち並ぶソウルの風景。思わず夢の中へ落ちていきそうなそんなゆったりした時間が流れる。

   便器の向きが逆? ハンガン(漢江)公園にて

 下船して丁度いい塩梅にタクシーが捉まった。地下鉄も良いが流石に疲労がたまってきたので一気にタクシーでインサドン(仁寺洞)まで行く事にした。お目当ては前回大失敗した伝統茶と土産物買いである。

 カンナム(江南)地区からミョンドンの北にあるチョンロ(鐘路)地区まで走って千円もしないタクシー料金に驚きながら、ガイドブックで推奨されている伝統茶院へ足を運ぶ。雰囲気の良い庭園を抜け店内で伝統茶と韓国菓子に舌鼓を打つ。それにしてもオミジャ(五味茶)の本場ものは味が違う。

 インサドンは今まで歩いてきた中で恐らく一番日本人密度が高い場所である。故にこの伝統茶院でもばっちり日本語が通じる筈だが、茶が運ばれるまでの間に娘が水を欲しがったので、店員のアガシ(娘さん)に、

 「チョギヨ! ムルジュセヨ!」(すみません。お水下さい)と思い切って言ってみた。

するとアガシは「ネッ!」(はい)と答える。いやー通じる通じる。ちょっと嬉しくなってしまった。

"はい"も韓国語ではイェーとネーの二通りがあるが、ネーのほうがより丁寧な言い方。「ネッ!」と語尾を短くするとかなりハキハキした答え方になるのだ。もっと堅苦しくなると「アイゲッスミダ」(承知いたしました)というのもある。


 インサドンから一旦ホテルへ引き上げ、明日のツアーの集合場所であるロッテホテルまで偵察を行う事にした。

 ロッテホテルまでは歩いても5〜6分というところで、更にミョンドンまでが5〜6分だから、ニュークッチェホテルもなかなかのロケーションでは無いか。寝るだけという方にはお勧めの宿かもしれない。比べてロッテホテルの絢爛豪華な事。さぞかし値段も張ることだろうに。最も、電車でインチョン歩きを考えている自分などにとっては少しも羨ましくないものだ。

 さぁ今晩の夕食はどうしよう。KFCで食べようなんて意見も出たが、あちこち歩くのも億劫なので結局ニュークッチェホテルへ帰る途中の適当な店(モッポチプ{家}という名前 モッポの意味は?固有名詞かもしれない)に入ってしまった。店先のメニューに日本語が書いてあるのに店内のメニューはハングルだけ。ちょっと戸惑っていると、むこうの席の韓国人の中年が、「私は日本に居たことがあります。お手伝いしましょう」と流暢な日本語で顔を突っ込んできた。

 話を聞くと隣の店に比べてこちらがガラ空きなのは味があまり良くないからだという。彼らも隣が一杯で入れなかったので仕方がなくこちらの店に流れてきたという。肉も国産ではなくてNZ産の肉を使っているのでよしたほうが良いというアドバイスがあった。ちょっと驚かされた気分になったが、家内達もさして焼き肉が食べたそうでもなかったのでまたしても無難な線で、ビビンバとキムチチゲを頼んだ。

 後からやってきたサラリーマン風の一行は、焼き肉をジュージュー焼きながらソジュ(焼酎)をクイクイあおっている。地元っ子にとってはお手頃の店なのかもしれない。

 ビビンバはステンレスのボールに具材がドンと盛られてそれにご飯を自分で乗せてかき混ぜる。コチュジャンは好きなだけ入れて更にかき混ぜるべし。厚鍋で焼かれた日本の石焼ビビンバを期待すると、もはやこれは全く別の食べ物かもしれない。2年前に食べたビビンバは石焼ビビンバであったが、果たしてどちらが本当のビビンバなのか。ちなみに味の方はそこそこのようである。

 一方キムチチゲのほうはというと、ひたすら辛い!スープの出汁が今一つ物足りない感じもする。なるほど確かにこの店は外れかなと思ったが、案外家庭料理的な味はこんなものなのかも知れない。これもまた自由な旅の味わいであろう。

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