夢で逢えたら

    作 者:HANAKO/山花典之
    全巻数:17巻
    出版社:集英社
    初版年:1994年9月
夢で逢えたら


 24歳A型の平凡サラリーマン、「ドラえもん」ののび太にそっくりのフグ野マスオは株式会社「海山」のうだつの上がらない営業部員。ひょんな事で知り合った幼稚園に勤める潮崎渚(しおざきなぎさ)に一目惚れ。

 渚は女子高育ちの無菌培養。男性恐怖症でもあるが、マスオの誠実さに徐々に心を開いていく。

 彼女いない歴24年のマスオは恋愛についてはまったくのおくて。恋愛にもそして人生にも自信が持てないが、渚への恋心が幾多の試練を超える原動力になる。いつしか彼は渚の心の中に無くてはならない存在となっていく。


 まずビジュアル面と作者の成長から先に。

コミックス3巻打ち止めのジンクスに悩まされた山花典之(連載開始時はHANAKO)の長編出世作。画も初めの頃と終わりとでは随分違っている。というか初めの頃は全体的に随分と雑で、女の子の全身立ち絵なども妙に下半身の線が雑で肩から上で力尽きているのではないか思いたくなるようなありさま。恐らく連載が長期化するに従ってアシスタントが確保出来るようになり細かい部分に筆が届くようになったのではと邪推。
 ストーリーやたまに出てくるチラリズム(全然必然性の無い渚の入浴シーンや下着姿)も妙に読者に媚びているようなところが多い。しかし、後半は画の成長もさることながら、ストーリーも社会性を取り入れてマスオの純情が際立つようになりどんどん読み手は引き込まれていくようになる。

 結果から言えば、少女漫画のようなストイックさとは違うし、ドラマ仕立てのような大人の世界でもないし、成人漫画では絶対に無い、青春漫画とでも言おうか。とにかく彼女いない歴うん十年の読者が真剣に自己投影をしてしまうようなキャラクターなのだ。マスオ君の純情は。
 もうちょっと違った視点で見れば基底に流れるのが性善説なのである。生真面目なマスオの人生観と行動に初めのうちこそ「要領の悪いやつ」とある意味蔑んでいた同僚達やそして読者達。マスオの渚に寄せる「真心」が彼を成長させより一層彼の純情に磨きがかかるつけ、ラストのハッピーエンドは読む者の感涙を誘うだろう。
 マスオのその優しさ故に、親会社の常務令嬢が言い寄ってきたりするが、スケベ心から解脱していない彼の動揺もまたマスオ=読者を飽きさせない工夫であり好演出。

作成:03/06/23

当ページの画像は、HANAKO/山花典之作、集英社発行の「夢で逢えたら」17巻よりスキャンして使用しております。他に転載及び使用されることは堅くお断りします。