作 者:山崎花子 全巻数:3巻 出版社:集英社 初版年:1989年6月 |
アンパン(背景中)は両親が海外出張中のため、祖父と二人暮らし。この家にアルバイトでやってくる家政婦のみるく(背景両隣)はアンパンのクラスメイト。
みるくは可愛く男子の憧れの的だが、アンパンは特に目立つことも無い平凡な高校生。こんなでこぼこカップルだが、密かにアンパンに好意を寄せるみるくと、本当は彼女が大好きなのに素直になれないアンパン。すれ違いのケンカの末、お互い違った相手と浮気しかかるが・・・・
作者の山崎花子は実は男である。後にHANAKO、そして現在の山花典之と3回改名しており、「CHI・GU・HA・GU」はデビュー作。はじめはこのことを知らずに、絵柄の可愛さ故に女性が描いているのだとばかり思っていた。作品を読んで見るとそこここに男性視点が。おや、と思い調べてみると実は男性だった。
ヤングジャンプ連載ということで、いかにも読者好きのするような設定である。お世辞にも出来が良くない男の子に、これまたよく出来た、可愛くて頭がよくて、それでいてしっかりしていて、申し分のない彼女が寄り添ってくれるという、もはやご都合主義以外の何ものでもないようなストーリ展開である。
で、ここまで評していながら言葉をひっくり返すようだが、アンパンを見ていると、自分も含めて男の幼児性というか弱さをデフォルメされているような気がして、身につまされるものがある。読み進めるうちにみるくの可愛さにきっと参っているだろう。だいたい家政婦と称して、男子羨望の的の彼女が自宅に出入りするあたりからして相当反則技的な設定である(笑)
お互いの気持ちをはっきり口に出せずにいつまでもじれったい2人だが、今時の高校生はいざ知らず、少なくとも同じような感性で学生時代を過した者としては甘く懐かしいノスタルジに浸れること間違いなし。また、感情の起伏として上げるところと下げるところのアクセントがはっきりしており、見た目少女漫画っぽいが、とかく一本調子的になりがちなそれとは一線を画していると思う。