アリエスの乙女たち

    作 者:里中満智子
    全巻数:文庫本4巻
    出版社:講談社漫画文庫
    初版年:1998年6月
アリエスの乙女たち


 水穂路実(みずほろみ)は、転校した高校で同じアリエス(おひつじ座)生まれの久保笑美子(くぼえみこ)と知り合う。
 激しく生きようとする路実、自己抑制志向のの笑美子。対象的な性格だが、2人は同性でありながら惹かれていく。そんな二人に優等生の磯崎高志(いそざきたかし)と、問題児の結城司(ゆうきつかさ)が接近してくる。
曲折を経て、路実と司、笑美子と高志はお互いに愛し合うようになる。


 そんな中、高志の父親が愛人と心中してしまう。高志は進学を諦め、しがない中小企業のサラリーマンとなり自堕落な日々を過ごす。一方、司が以前遊びで付き合っていた津川敬子(つがわけいこ)が司の子を宿していたことがわかり、不本意ながらも司と敬子は所帯を持つことになる。さらに路実は唯一の片親である母を交通事故で亡くすことに。

 過酷な展開を乗り越え、己の信じる愛を貫き通す路実と笑美子はラストに向け情熱を燃やし続ける。


 あらすじで述べた登場人物以外の人達も脇役を除いて全員が「痛い愛」に苛まれていてあまりにも救いが無さすぎる。ドラマ化されているようだが、うってつけの素材であったことは間違いない。読んでいて昼ドラを想わずにいられない展開だから。


 ラストでは涙を誘う落としがあるので読後は結構さわやか。しかし、過去に読んだ里中作品とこの作品の違いは何かと考えてみると、人々の愛憎を幾重にも重ね合わせていくところに一歩誤ればメロドラマに墜ちてしまう危うさがある。


 男性登場者の内面も丁寧に描き込まれていると思うが、所詮は女性視点でしか無いような気がする。もっとも主たる読者にとってはそれで充分なのだろう。男性一読者としてあえて一言わせていただくと、もうちょっと社会との関わりをストーリーに持たせて欲しかった。そうでないとあまりに閉塞的な愛憎の世界で窒息してしまいそうである。

作成:04/05/23

当ページの画像は、里中満智子作、講談社漫画文庫発行の「アリエスの乙女たち」1巻よりスキャンして使用しております。他に転載及び使用されることは堅くお断りします。