同・級・生

    作 者:紫門ふみ
    全巻数:2巻
    出版社:小学館
    初版年:1988年12月
同・級・生


 地方(鳥取)出身の名取ちなみ鴨居透(かもいとおる)は同じ大学の4年生。三年来の仲である。
 ちなみに結婚を断られた鴨居は広告代理店に入社し、経理の佐倉杏子(さくらきょうこ)と深い仲になる。
 男に依存していくタイプの杏子は表面的にはちなみと対照的。鴨居は杏子との暮らしの中に安堵感を感じるが、杏子は鴨居ちなみの幻影を振り捨てて欲しいと思い、会社を辞め、専門学校に進んで自己を磨き一人前の女になろうとする。またしても鴨居は結婚を言い出し断られることに。

 一方、ちなみも見合いでエンジニアの飛鳥浩史(あすかひろし)と婚約する。飛鳥の強引だが心優しいところに惹かれていくちなみであるが、やはりどこかで鴨居のことが忘れられない。



 愛の堂々めぐりは紫門ふみのお得意。そんな中で、大学4年という大人になりきれない世代の大人になっていく過程のストーリー。いわゆるジュブナイルストーリの典型ともいえる作品。ちなみ鴨居の"たけくらべ"に、同世代の一歩先んじた大人達が絡んできてストーリーを盛り上げる。

 女性が描く作品は往々にして女性視点としてバイアスがかかるのは当然のことだが、紫門ふみは懸命に視点の公平さを保ちながら描こうとしているような気がする。ラブストーリなのだが少しも昼メロっぽく感じないのはこの辺りにポイントがあるからなのではなかろうかと思う。

作成:01/10/11 加筆修正:02/05/05

当ページの画像は、紫門ふみ、小学館発行の「同・級・生」上下巻よりスキャンして使用しております。他に転載及び使用されることは堅くお断りします。