作 者:水沢めぐみ 全巻数:5巻 出版社:集英社 初版年:1986年3月 |
相原結(あいはらゆい)は山手中学校の2年生。同級生のくうちゃんと剣道部で頑張っている。ある日、結は幼かった頃の初恋の相手によく似た同級生の郡司一平(ぐんじいっぺい)に出会い、徐々に彼に惹かれていく。
結の両親の友人の息子であるアメリカ人のフレディは、結に心を寄せ彼女に告白するが、そんなフレディの想いは、意外にも結の出生の秘密までにもさかのぼる。
一平は今は亡き祖父から厳しく剣道を教えられていたが、父親との関係などで心ならずとも剣道から遠ざかっている。ところが、学生の頃は凄腕だった父親が剣道を辞めなければならなかった理由をある日知り、成り行きで親子は剣を交えることになる。一平は惨敗するが、自分の内なる弱さに目覚め、再起を誓って剣道部に入部する。
ちょっと斜に構えていてそれでいて実は心優しい男の子、そして彼を見つめる主人公(ヒロイン)の葛藤。少女漫画の王道であろう。「ポニーテール白書」もその枠組みを大きくはずしているわけではないが、他の作品と一線を画しているのはやはり主人公達の「内面の成長」をモチーフにしている部分であると思う。
こういった「成長記」が一般的にテーマとして珍しいわけではないが、一直線のラブコメに比べると「一粒で二度おいしい」的な部分がポニーテール白書では味わいを深めている。
結は、両親が育ての親であったこと、そして実の両親が瀕死のフレディに輸血したあと命を失ったことなどの「真実」に翻弄されるが、家族や仲間の暖かさに救われ、そして剣道に打ち込むことで自分を見失わずに済む。また、一平も父親との不仲や、両親の離婚騒動に苛まれながらも結と同じように成長を遂げていく。
話の最後では、共に好きだったことを打ち明けあった結と一平だが、遠く神戸の学校で剣道に打ち込もうとする一平。結は、悲しみを乗り越えるため、彼の飛躍を願うため、そして過去の自分と決別するためにポニーテールを切り落として笑顔で一平の門出を祝うくだりは涙を誘う。