結婚しようよ

    作 者:星里もちる
    全巻数:6巻
    出版社:小学館
    初版年:1994年3月
結婚しようよ


 とにかく見城早苗(けんじょうさなえ)と結婚したくてしょうがない紺野雅寿(こんのまさとし)は、ハイテク会社「アゲハテクニカル」の新入社員。ベンチャー部門であるブライダル課へ二人揃って配属される。
 ブライダル課は新規事業として結婚式場の運営立ち上げに携わるが、そこで彼らを待ち受けていたのは、キャリアウーマン(後に判明するが、夫と子供の協力を得た良き妻であり母親でもある)の久保田室長、バツイチで何かと早苗におせっかいを焼きたがる音響課の柿枝(かきえだ)達であった。

 早苗は結婚をあせる雅寿を愛してはいるものの、いざ「結婚」となると今一つ本質を飲み込めずにいる。むしろ仕事に打ち込める今の自分を大切にしたいという気持ちから雅寿に冷たくあたってしまう。
 一方、早苗とは正反対の性格の女、結婚式場専属の美容室に勤める小阪祥子(こさかしょうこ)が雅寿に近づく。結婚願望の雅寿にとって祥子はある意味理想的なタイプであり、ずるずると彼女と付き合いはじめる。しかし、祥子の独占欲に飲み込まれそうになることにより、憧れだった結婚と自分の精神的な未熟さをを見比べる機会に雅寿は恵まれる。


 トレンディードラマ風な進行の中、雅寿と早苗、式場を訪れる様々なカップルの結婚への価値観がきっちり描き込まれている。いささかストーリーが散逸しすぎるきらいもあり、今一つ心に残る部分に欠けるような気もするが、悪者のいない星里ワールドではどこにでもいそうな主人公達がどこにでもありそうな人間関係の中で結婚をテーマに苦悩していく。

 トレンディードラマ風漫画の雄、紫門ふみの作品が大人のドラマならば、星里のそれは青年ドラマとでも言おうか、爽やか感と建設的な前進がある分読後感に差がある。紫門の作品はよりドラマチックであるがやはり重さや切なさが多い。結婚という普遍的なテーマを描きながら現実臭くならなかったのは性善説的に登場人物を動かせる星里ならではの作風であろう。

作成:03/03/06

当ページの画像は、星里もちる作、小学館発行の「結婚しようよ」3巻よりスキャンして使用しております。他に転載及び使用されることは堅くお断りします。