未来のうてな

    作 者:日渡早紀
    全巻数:11巻
    出版社:白泉社
    初版年:1989年6月
未来のうてな


 人間の欲望に寄生する"ノイズ"と呼ばれる一族『北一』(ほくいつ)、これに対抗し続けて転生を繰り返す一族の『南一』(なんいつ)がいた。彼ら南一の転生に関与する『うてな』(過去と現在を見渡せる塔)に登る力を持った行者である秀真(ほつま)の魂が現世で宿ったのが高校生の末雪 健(まつゆき たける)である。

 前世で秀真の妻であった鈴鳴 苺(すずなり いちご)と恋をするが、南一族の有力者である『ゼロ』でありながら今はまだ小学生の北鳳院 全(ほくおういいん ぜん)や全の姉達の一族に護られながら北一との戦いに翻弄されていく。


 前作の「ぼくの地球を守って」では構想もなかなか壮大だったが、SFっぽさが強くて多少読者を選ぶようなところがあった。もっとも独自な雰囲気が美しく昇華していくといった趣があった部分は評価も高かったようである。
 さて、「未来のうてな」はどうだったかというと、出だしこそ「ぼくの地球を守って」を描き疲れたが故の軽い進行で始まったものの、見事にまたSFワールドに舞い戻っている。結局、北一の主星(一族の頭)が秀真の子供であったことを説明するくだりからラストまでは、人間の"業"と"愛"に強く訴えかけた「ぼくの地球を守って」のシ・オンを彷彿とさせるものがあった。

 導入部であれだけ話題振りをした健の母違いの姉である氷樹(ひょうじゅ)がほとんど脇役としてか絡んでこないことや、「ぼく地球」で事実上の一大主役であった小林輪の二代目かと思われた北鳳院全の活躍が少なかったのが個人的にはもの足りなかった。しかし、いろいろと濃くならずに済んだので逆に学園ものとしての楽しさを味わうことが出来たようである。

作成:04/05/04

当ページの画像は、日渡早紀作、白泉社発行の「未来のうてな」2巻、5巻よりスキャンして使用しております。他に転載及び使用されることは堅くお断りします。