柊あおい

乙女ごころ・夢ごころ

 「乙女ごころ・夢ごころ」「コバルトブルーのひとしずく」
 「魔法のとけたプリンセス」「夢の香りのティー・タイム」
 「春風のメロディー」、以上5作収載

 とにかくメロメロにラブロマンスしちゃってる作品群。作者も若かったのだろう、中高生の女の子にとっては恋愛とはかくのごとく甘美で切なくありたいという心を映すがごとし。下手な演出も無く直球勝負なのでそういった意味ではその位の年頃の女の子の気持ちがよく伝わってくる。
作成:03/03/13

STEP -ステップ-

 「STEP -ステップ-」「サイレント・ベル」、以上2作収載

 男の子とちゃんと話すことが出来ない内気な女の子、千波(ちなみ)が好きな男の子に思いを打ち明けるまでのお話。{STEP -ステップ-}
 千波のクラスメートならずとも読者もハラハラして「頑張れ」と言いたくなってしまう。しかし、こんなに健気な女の子に好意を寄せられている相手役の男の子も幸せ者よとちょっぴりジェラシー。
作成:03/03/13

ペパーミントグラフィティー

 仲良し4人組の恋物語を一人一章ずつでまとめたオムニバス。
 オムニバスと言ってもちゃんと一貫した共通のストーリー(状況背景)があって全登場人物が同じ時間と場所を共有しているのは面白い作りだ。柊あおい得意の内気少女の傾向はやや希薄で少女漫画としては割とナチュラルな感じがする。
作成:03/03/13

耳をすませば

 アニメ映画「猫の恩返し」への原点ともいえる作品。この後、「耳をすませば 幸せな時間」、そして「猫の恩返し」の原作そのものである「バロン 猫の男爵」へと続く。

 柊あおいはなかなかにストーリー巧者である。この「耳をすませば」も、現実感の中に浮遊するお噺好きの少女の素敵な物語が展開されている。わくわくしながら読み進めることが出来る。
作成:03/03/16

耳をすませば 幸せな時間


「耳をすませば 幸せな時間」「桔梗の咲く頃」2作収載

「耳をすませば 幸せな時間」
 「耳をすませば」から6年後に描かれた続編。
 「猫の恩返し」の名脇役ムタもこの話で登場。バロンの役割もより明確になってくる。
 僅か60ページ程度だが、前作「耳をすませば」を補完する意味でファンタスティックなこの作品も是非読んでおきたい。

「桔梗の咲く頃」
 「耳をすませば」のところでも書いたが、柊あおいは本当にストーリー巧者である。作品の間口が結構広いのだ。お噺も描ければラブコメもOK、それでいてしっかりりぼん路線は外さない。ある意味プロらしい作家だと思う。
 「桔梗の咲く頃」、実は個人的にかなり気に入った1作だ。柊作品に良く出てくる原っぱ的な自然風景、空とか夕暮れとかそういったごくありふれた自然が感傷的にさせる一因なのだろうか。白黒の漫画ページに咲きそろう桔梗の花と、桔梗という名前の少女が鮮やかなイメージで描かれている。
作成:03/03/17

バロン 猫の男爵

 大抵ドラマ化や映画化されたものは、「原作を超えられない」あるいは「異質なもの」として評価されやすい傾向があるが、「猫の恩返し」との比較をすれば主人公ハルの顔のタッチが原作と違うことを除けばストーリー的にもほぼ同じテイストである。もともと「耳をすませば」でジブリ作品のデビューを果たしている柊あおい。原作で作者が伝えたかったことは殆ど映画でもそのままストレートに表現されている部分が、ジブリの若手監督森田宏幸の感性なら、宮崎駿はどうこの作品を扱ったかが興味のあるところである。映画のほうが状況説明的な補完は多いが、これはストーリーとしての情報量の差が圧倒的なのでしかたが無いのである。
作成:03/03/17

この街で君に

 26歳の郵便配達員、広彬(ひろあき)と22歳で職に就けない絢花(あやか)の出会いのほのぼの情話。
 柊あおいらしい実直なストーリー展開が、人によってはクサイと思わせるものがあるかもしれない。しかし、あまりにも普段着に徹した設定と進行がマッチしていて共感が出来る。教科書ものの爽やかなコンテンツには脱帽ものである。
 同時収載の「この街であなたに」は絢花側の視点から同じストーリーをなぞる。ザ・マーガレット掲載は「この街で君に」から半年後の発表になるが、内容的に目新しさが乏しく、1作目を読んでしまった読者はもう一ひねり欲しいと感じるだろう。
作成:04/02/10