わる

    作 者:深見じゅん
    全巻数:37巻
    出版社:講談社
    初版年:1989年7月
悪女


 三流大を四流の成績で卒業し、超一流商社「近江物産」に冴えないコネで入社した主人公、田中麻理鈴(まりりん)は、窓際族の溜まり場のような"庶務課資材管理室"へ配属される。
 そんなある日、同じ社のエリート社員であるT・Oこと田村収氏に一目惚れするが、麻理鈴はその想いを糧に、持ち前の明るさと元気さ、強運の人脈で巨大組織を生き抜いていく。


 一見ショムニのようなシチュエーションであるが、天真爛漫な主人公である麻理鈴が、組織や男達だけでなく、才女や美女にも互角に闘えるあたりが見ていて気持ちよい。勧善懲悪的な色彩もあるが、特に嫌な女性社員や上司が登場してきた時は思わず麻理鈴に感情移入してしまう。才覚は無いが、素直さと明るさを武器に、気がついたら敵は全て味方に取込んでしまうという話の進行である。

 ラストまでT・O氏に対する憧れで戦い抜く麻理鈴のひたむきさは、一見少女漫画臭さを感じさせるが、そんな情熱を社会とか会社組織に対極させることにより、人間の本当の生き方を示してくれているような気がする。事実、何人もの企業戦士が己への後悔に涙し、希望を見い出しながら麻理鈴に癒されていく。

 実社会に疲れたあなたなら、一度は読んでみるべし。きっと麻理鈴に勇気を貰うこと間違いなし。

作成:01/06/09 加筆修正:02/05/04

当ページの画像は、深見じゅん作、講談社発行の「悪女」1巻よりスキャンして使用しております。他に転載及び使用されることは堅くお断りします。