ぽっかぽか

    作 者:深見じゅん
    全巻数:6巻
    出版社:集英社
    初版年:1995年8月
ぽっかぽか


 郊外の一戸建てに住む田所家。片道2時間の通勤の慶彦は30歳台のサラリーマン。ズボラだが快活な妻麻美と、屈託のないひとり娘のあすかとの3人暮らし。
 何気ない日常の中に自然体の愛情を描いたオムニバス形式の全42話からなる。


 深見じゅんの作品はに共通することは、女性主人公の天真爛漫さであろう。
 「ぽっかぽか」のテーマは家族愛だが、ともすれば忘れがちな夫婦間の情熱や思い遣りにスポットを置いている。もちろん作者が得意とするところの、女性の社会との繋がりや人生観にも抵触しているが、「悪女」と同様女性であることをすべて受け入れて卑屈にならずに生きていくスタイルがちりばめられている。大いに女性読者の共感を得る部分であろう。

 良妻賢母というと、古い価値観と切り捨てられてしまうかもしれないが、夫婦や家族がうまくやっていくにはそういった生きるための知恵が必要なのかもしれない。
 封建的な時代の良妻賢母は、今の時代の女性にそっぽを向かれることは間違いないだろう。しかし、「ぽっかぽか」の麻美の生き方は現代風の良妻賢母を示しているような気がする。誤解の無いように追加しておくが、彼女を支える良夫賢父や子供の存在が原動力であることを。

 読者によっては、「こんなできすぎ夫婦はいないよぉ」と思われるかもしれないし、1巻あたりは随分甘ったるい部分も多い。だが、巻を進めるにしたがって徐々に深見ワールドにはまっていく。また、娘のあすかちゃんも実に可愛い。この夫婦にしてこの子ありである。
 心が暖かくなりたい人にはお勧めの作品。

作成:01/08/11 加筆修正:02/05/05

当ページの画像は、深見じゅん作、集英社発行の「ぽっかぽか」1,3巻よりスキャンして使用しております。他に転載及び使用されることは堅くお断りします。