ときめきトゥナイト

    作 者:池野 恋
    全巻数:30巻
    出版社:集英社
    初版年:1982年11月
ときめきトゥナイト


第1部
 江藤蘭世(えとうらんぜ)の両親は吸血鬼と狼女。訳あって魔界から人間界へ降り立ち人間として暮らしている。蘭世は普通の中学校へ通い同級生の真壁俊(まかべしゅん)へ片想いの日々。ところが意外な事に真壁俊の母親が魔界の元王妃で人間界へ追放されていた。すなわち真壁俊は王子という真実が判明する。魔界に残っていた俊の双子の兄弟であるアロン王子は蘭世に一目惚れしてしまい、また恋のライバルでもある王位継承者の俊に嫉妬する。
 一方、俊は赤ん坊に生まれ変わり、蘭世のひたむきな愛情を注がれながら物凄い速さで成長し魔力を手にする。魔界の抵抗勢力と戦うが、やがて魔界王と和解の日々が訪れる。

 魔界と人間界に平和が戻ったあと、かつて滅びたはずの冥界の王ゾーンが魔界征服を企む。蘭世の愛と俊の勇気と魔界が一体となりこれを阻む。魔界王はゾーンの攻撃に敗れ没するが、天上界から新王アロンと俊、蘭世達が魔界を守っていくことを念じる。

第2部
 蘭世と俊はめでたく結婚。この時点でアロンは結婚して王女ココ姫の父親になっている。1部では幼稚園生位だった蘭世の弟、鈴世(りんぜ)と市橋なるみが今度は中学生。二人が2部の主役である。
 なるみと鈴世の出会いは1部に遡るが、心臓病で命を失いかけていたなるみは、蘭世たちの死神への働きかけや鈴世の励ましで生を得たというエピソードがある。
 ふとしたことから江藤家が魔界人であることを知ったなるみは、自らも魔界の花を口にしたことにより魔力の片鱗を身につける。一方鈴世は体内の細胞が組み変えられるという事態に遭遇し昏睡状態。なるみは魔界へ行って取ってきた月の花の露を鈴世に飲ませ彼を救う。

 ある日なるみの父親は再婚し、連れ子であるマナという妹が出来る。ところが月の花の精チップルとマナは、今は悪の妖精に制圧されてしまった妖精界の王子と姫であることがわかる。悪の黒妖精ドゥーサとの戦いで鈴世は魔法の粉をかけられ記憶を全て無くしてしまうが、なるみの捨て身の愛が鈴世を復活させ、なるみと鈴世の愛は深まることに。

第3部
 俊と蘭世には卓という長男がいるが、二人目の愛良(あいら)が誕生する。3部の主役はこの愛良。
 鈴世となるみが結婚を控えた頃、死神が不吉な知らせをもってやってくる。なるみが近く命を落とす人のリストに乗っているのだ。鈴世は自らの命を捧げてなるみを救おうとするが、それは「永遠の命」すなわち魔界人であることを捨て、人間になることであった。
 "99の能力を身に付け、魔界では右に出る者のない大魔女になるであろう"と水晶玉のお告げがあった愛良は、王家に使える魔女メヴィウスの後継ぎとして修行を始めることになる。

 愛良の初恋の少年、水上開陸(みなかみかいり)は父、妹と共に「無の世界」に隔離されていた。愛良と不思議なペンダントの力で開陸達は救い出される。開陸の父親は先代の魔界王の側近の一人で濡れ衣を着せられて幽閉されていたのだが、無実を訴える彼の言葉を信じ愛良達は過去に遡り真実を突き止める。

 中学生になった愛良は、兄の卓が行っている高校のサッカー部のコーチである新庄彬水(しんじょうあきみ)に恋をしてしまう。魔女の修行のため恋を禁じられた愛良だが、新庄へ対する思いは募るばかり。先を案じた魔女メヴィウスは新庄を魔界に連れ去り彼を葬ろうとするが、愛良に知られ師弟は戦うことに。


 全30巻を補完する完結編である「ときめきトゥナイト 星のゆくえ」まで含めると、途中休筆があったとはいえ約18年の長きに渡る長編である。
 テーマは一貫している。主人公である、蘭世・なるみ・愛良達の愛の力が邪悪に立ち向かい打ち倒していくというもの。ストーリーとしては凝った設定はないが、江藤ファミリーの魔力などの小道具が巧く使われている点や、恋のライバルである神谷曜子とその子供達が、親子二世代にわたりボケ役でうまく絡んでくるところがなかなか面白く飽きがこない。毒気づいたところがないところ、適度に冒険性があるところ、魔界のロイヤルファミリーを絡ませて華やぎを添えるところ、それでいて主人公が普通の女の子っぽいところ、まっすぐな「愛」を加わえてと、いいとこ取りである。結局よく練られた構成と言わざるを得ない。長期間少女読者に支援されたのも頷ける。

 通しで全巻読みきると、キャラクターの成長というのも面白いもので、いつまでも家族構成年齢の代わらない「サザエさん」と対極にあるような作品でもある。登場人物がどんどん歳を重ねていってその子供達もお年頃になるのを見るにつけ、自然と江藤家を中心としたファミリーに親しみを感じるのだがら面白いものである。

作成:02/10/22

当ページの画像は、池野 恋作、集英社発行の「ときめきトゥナイト」23巻,30巻よりスキャンして使用しております。他に転載及び使用されることは堅くお断りします。