作 画:小山ゆう 原 作:武田鉄也 全巻数:23巻 出版社:小学館 初版年:1987年11月 |
幕末の風雲児、坂本竜馬の出生から暗殺までの生涯を、独自の脚色で綴った伝記もの。
感 想
竜馬を題材にした小説は司馬遼太郎の「龍馬がいく」などが有名だが、幼少時代を細かに記述したのは「お〜い!竜馬」だけのようである。多少史実を踏み外した記述が多い竜馬幼少年期だが、作者の小山ゆうが表現したかった竜馬像がよく伝わってくる。尊王攘夷の先鋒として土佐勤皇党を率いた武市半平太、武市のもとで要人暗殺に奔走した人斬り以蔵こと岡田以蔵。竜馬と半平太は遠い親戚であったようだが、以蔵との3人組を幼馴染にして、思想と立場を超えた友情での演出は坂本竜馬という人間をよりわかり易く身近にしている。
青年期以降はかなり史実に忠実に描かれていくが、よくある竜馬英雄譚にありがちな「日本の夜明けを背負う」的な彼の佇まいよりも、奔放に生きぬいていくことの赤裸々な姿がよく表現されている。竜馬の成した事は確かに日本近代化の礎と言って間違い無いし、歴史の教科書では学ばなかった裏方的な偉業はひたすら賞賛に値する。国=藩という意識が一般的であった当時、日本国を大局的に憂えることの出来た彼は、真の意味での"自由主義者"であったことがよく伝わってくる。土佐の下級武士であった郷士層の屈辱、幼少時に目前で友人が藩主により切り捨てられるシーンなどはショッキングだが、そういった体制からの開放が竜馬の根底にあるといった見方は作者の正しい考察であろう。
ちなみに、史実を確認する為にはあまた出版されている「龍馬考察本」を必ず読まれることをお勧めする。「お〜い!竜馬」では先述のようにかなり意図的に竜馬幼少期の出来事が創造されており、場合によっては土佐藩主山之内容堂や、後藤象二郎については演出過剰で必要以上の偏見を植付け兼ねない部分がある。また、上士、山田広衛への仇討ちのシーンは事実と全く異なる設定になっていたりするので、「お〜い!竜馬」の知識そのままを事実として他人に説明してはまずい。注意が必要である。
で、実際に「龍馬本」を何冊か読み漁って見ると、坂本竜馬という人間の持つ、政治家としての側面、商人としての側面、おのおのの泥臭い部分が見えてくる。漫画で描かれているような率直な青年象だけではとうてい説明出来ない彼の生涯だったのである。
竜馬が生きた年代あたりになると「写真」が結構手軽に撮影されるようになり、人々の記録画像も多い。竜馬をめぐる人達も写真が残されており小山ゆうはかなり緻密に実像を再現しようと試みている。あまりにも巧く描けているので、別にまとめてみたのでこちらもどうぞ。
後藤象二郎 | 山内容堂 | |
勝 海舟 | 河田小龍 | |
お龍 | お登勢 | |
桂小五郎 | 高杉晋作 | |
岩崎弥太郎 | 大久保一蔵 | |
中岡慎太郎 | 三岡八郎 |