「凄絶嫁姑戦争」 作 者:井出智香恵 全巻数:5巻 出版社:主婦と生活社 初版年:1998年4月 |
杳子(ようこ)はN県の3世代同居の家に生まれ、他家へ嫁いだ伯母や、母と姑との戦いを目の当たりにしながら育つ。
成人した彼女は、旧家の長男である小椋貴史(おぐらたかし)と結婚する。小椋家では、大姑の夫の自殺に姑が絡んだとされていることから、姑と大姑が長年の確執でいがみ合っている。そんな中、大手商社の部長を勤める舅も愛人を作るなど家の中は滅茶苦茶な状態。
はじめのうちこそ姑のいじめに涙して耐えてはみたものの、いじめが原因で身篭った子供の命を奪われた杳子は、自らもまた人を憎む鬼のような羅刹(らせつ)の道を歩みはじめる。
貴史は杳子のことを深く愛し、杳子もそれに応え、羅刹に傾きかけている自分をなんとか正気に戻そうとするが、何度も挫折することになる。「男達はあてにならない。これは嫁と姑の戦い」と割り切り、文字通りどちらかが倒れるまでの戦いがはじまる。
いやぁとにかく凄い!
1巻目辺りは、どうも昼メロっぽい感じでダルかったが、シチュエーションに妥協が無いというか限度が無いというか、とにかく読んでいて救いが無い話である。
人間としての理性や道徳心との葛藤の末、逞しく姑と対決していくくだりは、読者(恐らく殆どが奥様方)の擬似体験を投影し、さらには共感を呼び、ある時は溜飲を下げたことが容易に想像できる。ちなみに羅刹とは仏教用語で悪鬼の総称であるらしい。
私は男なのでこういう奥方の感性はなかなかに理解しがたいものではあるが、ここまでシリアスに描き切るとある意味凄い。
オーラスは人間性を取り戻した姑の「死」という形で締めくくられるが、流れ的に後味もよく、そして嫁姑戦争の継続性、すなわち輪廻を匂わせながらまとめている。以下最後の2ページを抜粋。
時よ 元に還れ
答えが見つからない
葬式がすみ娘が生まれ
風のように時間が流れ去っても・・・・・・
そう
終わったような気がするだけ
いずれは昴) も結婚して今度は私が姑になる
やってみよう
お義母さまと争い続けた後悔の分だけ
昴の嫁にはいい姑になれるよう
それがあなたへの私の償い
女の人生というものの
答えを探し続けながら生きていく
そこで見ていてくださいね
お義母さま
それにしても 本当に終わったのでしょうか
私たちの戦いは・・・・・