おいしい関係

    作 者:槙村さとる
    全巻数:16巻
    出版社:集英社
    初版年:1993年7月
おいしい関係


 良家の社長令嬢である藤原百恵(ふじわらももえ)は生粋の美食家。ご飯もろくに炊けないのに食べることにかけては超一流である。そんなある日、父親の急死と会社の倒産の憂き目に。百恵は就職を探す日々、街の洋食屋「プチ・ラパン」で衝撃的な味とその料理を作るシェフ、織田圭二(おだけいじ)と運命の出会いを果たす。織田は今でこそ洋食屋のコックだが、かつてはパリの有名レストランに勤めていた腕前。
 百恵は師匠としての織田への憧れが恋に変わっていくのを序々に気づきはじめるが、織田には今村可奈子(いまむらかなこ)という恋人が居る。かなわぬ恋、修行への戸惑いを感じ「プチ・ラパン」を辞める。
 次に百恵が勤めることになったのは高橋薫の店。高橋もかつては織田と同窓で腕を磨いた名コックであるが、二人は性格が正反対。
 織田は可奈子と協力して自分の店を持つことになる。また、高橋薫の店「アムール」には凄腕の女性コック日比野ミキが入ってくる。腕は確かだがことごとく自分の料理の理想からかけ離れた日比野の姿勢に、そして自分の居場所の無さに困窮した百恵は店を飛び出してしまうが、料亭の仲居を経て料理の道への再起を賭け再び「アムール」へと戻る。
 一方鉄の女である筈だった日比野に異変が起こる。阪神大震災の残した心の傷跡が彼女をふとしたきっかけで狂わしてしまったのだ。失意の日比野と彼女を放っておけない百恵は、お互いに欠けていたものを見つけあうことができ、友情を結ぶも日比野は神戸へと帰っていく。
 正式に「アムール」のコックになれた百恵は再び織田に接近する。織田の百恵に対する見方が変化していくことを感じ取り、可奈子は激しく嫉妬し動揺する。そんな中ついに、百恵は織田に"正式に"告白してしまう。織田は可奈子との暮らしに息苦しさを感じ二人は別れることに。
 フランス料理連盟のコンクール出場の特訓で、百恵と織田は気持ちが通じ合うことになり、さらに織田は子供の頃に両親から突き放されたトラウマと決別し、百恵と新たな一歩を踏み出すことになる。


 限りなくドラマに適していながら、ここまで華麗で個性豊かな登場人物ではこの話のテイストを役者さんが再現するのは難しいと思う。実際ドラマ化されてはいるらしいが、遠く及ばずは言わずもがな。

 善意の中で、あふれるばかりの愛情を受けて育った、純粋無垢のヒロイン百恵。単なる軟弱お嬢様だと思っていると意外としっかりとした人生観があってめげないで、そのひたむきさに男性読者なら絶対惚れこむこと間違い無しの彼女である。ストーリーの中では百恵はさまざまな人と出会いながら自分磨きをして成長していくが、肩に力が入っていない彼女のキャラクターがレディースコミックの読者達に共感を得たのかもしれない。
 結末は、あくまでハッピーエンドのラブストーリーなのだが、ハイソな世界、おいしいもの、きれいなもの等をうまく組み合わせて飽きのこないシナリオ展開は花マルもの。男性読者には絵柄がちょっと辛いかもしれないが、百恵ちゃんが可愛いので許せてしまう(個人的見解)

作成:02/11/15

当ページの画像は、槙村さとる作、集英社発行の「おいしい関係」9巻,13巻よりスキャンして使用しております。他に転載及び使用されることは堅くお断りします。