みのり伝説

    作 者:尾瀬あきら
    全巻数:12巻
    出版社:小学館
    初版年:1995年4月
みのり伝説


 安月給の冴えない出版社に勤める杉苗みのり。28歳になったのを契機に辞表を突きつけフリーライターへ転身。辞めた会社は倒産し、給料は未払い。挙句のはてに住んでいるアパートが地上げに遭って立ち退かなければならない。預金残高28円に呆然とするみのりのお話がスタート。

 そんな無い無いづくしのみのりの初仕事は、零細ではあるが人望の厚い織田が経営する出版社の原稿であった。また、中堅出版社の望月も織田のようにみのりの才能を見出した編集者であった。みのりは、様々な仕事で自らの非力さを悟りながらも信念に基づき行動し、心の通ったライターとして成長していくが、その過程で多いに支えてくれたのがこの2人であった。


 何事もフリーでやっていくというのは大変な事で、特にライター稼業などはよほど知名度が高いか面白い文章を書くかのどちらかで無いと出版界からは相手にされないのではないかと思う。

 パトロンと言ってしまうと下衆な感じがするが、みのりも織田と望月という2大スポンサーが影に日向になりながら手を差し伸べてくれていたが故の成功と言っても過言でない。この二人の男達と三十路女の相互恋愛感情をない混ぜにしたところが、ストーリー上等身大の女性を描くことができたポイントである。
 「フリーライターで食べています」なんて、さも仕事一筋です的な女性像だが、同年代の女達が家庭に収まる姿に心揺れ、しかしながら、女であることと職業人であることの両方を捨てずに頑張るしなやかさと、もう小娘ではないぞとばかりに図太い部分も併せ持ったみのりの姿が精気溢れていて美しい。

作成:03/09/19

当ページの画像は、尾瀬あきら作、小学館発行の「みのり伝説」3巻,4巻よりスキャンして使用しております。他に転載及び使用されることは堅くお断りします。