動物のお医者さん

    作 者:佐々木倫子
    全巻数:12巻
    出版社:白泉社
    初版年:1989年4月
動物のお医者さん


 西根公輝(にしねまさき)と友人の二階堂は、運命の出会いでアフリカ大好きなH大の漆原教授よりシベリアンハスキーの子供チョビを託される。もともと動物好きだったこともあり、教授のいるH大獣医学部に二人は進むことに。公輝は公の字を上下別々に読んで通称ハムテルと呼ばれている。両親が海外で長期不在の西根家はハムテルとおばあさんの二人暮しだが、関西弁を話すおばあさんの飼い猫ミケ、西根家最強の生物である鼻っ柱の強いニワトリのヒヨちゃん、いつもマイペースなスナネズミ達、そしてチョビが毎日元気に暮らしている。
 ハムテル・二階堂の腐れ縁コンビの大学生活は、破天荒で他人の迷惑を顧みないけど根は動物好きの漆原教授、細菌をこよなく愛する変な先輩である博士課程の菱沼女史、そしてキャンパスにいつもお供でやってくるチョビを交えててんやわんやな日々が繰り広げられる。


 全12巻で一応大まかなストーリーはあるのだが、殆ど読みきりなので肩が凝らない。言い換えればシナリオにぐいぐい引き寄せられて読破していくタイプではない。だが何となくジワっと面白いというのが正直な感想。
 「動物のお医者さん」になろうとしている学生達が主人公か、はたまたチョビ達動物が主人公か渾然としているが、動物達の目から見た人間の可笑しさ、人間達から見た動物達の可笑しさのどちらもがそこはかとなく漂っている。また登場人物(動物)の全てが実に個性豊かでおのおのに愛着が湧いてくることうけあい。
 話の中で男女の色恋沙汰はまったく出てこない。そのかわりハムテルと二階堂、菱沼さんの三人の服装は、目立たないながらもファッショナブルな着せ替え人形の様相を呈す。一応少女漫画への連載だったので、地味な進行に華やぎが欲しかったのだろう。
 また、時折出てくる専門的な事柄や描写、舞台である北海道のH大(北大?)の構内風景などについては、緻密に取材を重ねている様子が垣間見られる。

作成:03/01/12

当ページの画像は、佐々木倫子作、白泉社発行の「動物のお医者さん」1巻,12巻よりスキャンして使用しております。他に転載及び使用されることは堅くお断りします。